公認会計士の転職では、資格の有無だけでなく、監査経験、担当業界、マネジメント経験を転職先でどう生かせるかが重要です。
「監査法人を辞めて転職したいけれど、どこへ行けばいい?」
「事業会社やFASへ移ったら年収は下がる?」
公認会計士の転職では、一般的な転職とは違い、資格だけでなく監査経験・担当業界・マネジメント経験などが評価されやすいのが特徴です。
一方で、年収だけを見て転職すると「仕事内容が思っていたものと違った」「繁忙期が想像以上だった」と後悔する可能性があります。
この記事では、公認会計士が転職するときに確認したい5つのポイントと、監査法人、FAS、事業会社、IPO準備企業などの代表的な転職先をわかりやすく解説します。
転職活動全体の流れを整理したい場合は、20代・第二新卒の転職完全ガイドも参考にしてください。
公認会計士の転職先にはどんな選択肢がある?
監査法人以外にも複数のキャリアがある
公認会計士の資格や経験を生かせる転職先は、監査法人だけではありません。代表的には次のような選択肢があります。
- 監査法人
- FAS・財務アドバイザリー
- コンサルティングファーム
- 税理士法人・会計事務所
- 事業会社の経理・財務
- 経営企画
- 内部監査
- IPO準備企業
- 金融機関
重要なのは「会計士だから次も監査法人」と決めつけないことです。これまでの経験と、今後どんな仕事をしたいのかを整理してから転職先を選びましょう。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tagの公認会計士」でも、監査法人に加えて一般企業、独立、コンサルティングなど複数の働き方が紹介されています。
公認会計士の転職で確認したい5つのポイント
結論:転職目的、監査経験、年収の内訳、繁忙期、5年後のキャリアを同じ基準で確認します。
1.転職後に何をしたいのかを明確にする
まず決めたいのが転職の目的です。たとえば、次のような希望があります。
- 年収を上げたい
- 監査以外の仕事を経験したい
- 残業を減らしたい
- 事業会社側へ行きたい
- M&Aに関わりたい
- IPO支援に携わりたい
- 将来独立したい
転職目的によって選ぶべき職場は変わります。年収アップだけを目的にすると、仕事内容や働き方が合わない可能性があります。
2.監査経験をどう評価してもらえるか確認する
監査法人から転職する場合、これまでの経験が重要です。特に、次の経験は具体的に整理しておきましょう。
- 担当してきた業界
- 上場企業の監査経験
- IPO関連経験
- IFRS対応
- 内部統制
- マネージャー経験
- チームマネジメント
単に「監査法人で5年勤務した」だけではなく、「5年間でどの業界の、どの業務を、どの立場で担当したか」まで説明できるようにすることが大切です。
3.年収の内訳まで確認する
公認会計士の転職では、年収アップを期待する人も多いでしょう。ただし、求人票に書かれた想定年収だけを見るのは危険です。
| 項目 | 現職 | 転職先 |
|---|---|---|
| 基本年収 | 650万円 | 700万円 |
| 賞与 | 100万円 | 50万円 |
| 想定年収 | 750万円 | 750万円 |
| 残業 | 月40時間 | 月25時間 |
基本給が上がっても、賞与や手当が減る可能性があります。基本給、賞与、残業代、インセンティブ、昇給、退職金まで確認しましょう。
内定後に提示された条件は、口頭だけでなく労働条件通知書などの書面で確認します。年収が同じでも、働く時間や福利厚生まで含めると実質的な条件は変わります。
4.繁忙期と残業を確認する
会計士の場合、仕事内容によって忙しい時期が変わります。監査法人なら決算期、FASなら案件の進行状況、事業会社なら決算・開示時期などによって業務量が増えることがあります。
求人票に「残業月20時間程度」と書かれていても、年間を通した平均なのか、繁忙期も同じなのかで意味が違います。
- 通常期の残業
- 繁忙期の残業
- 土日勤務の有無
- 在宅勤務の利用条件
- フレックスタイムの運用実態
制度の有無だけではなく、配属予定チームで実際に利用できるかまで面接で確認するとよいでしょう。
5.5年後のキャリアを考える
転職時の条件だけでなく、その会社で経験したことが将来につながるかも重要です。たとえば「監査しか経験していないので事業会社側へ行きたい」と考えるなら、次の経験を積めるか確認します。
- 連結決算
- 開示
- M&A
- IPO
- 経営企画
- 管理会計
目先の年収だけではなく、次の転職でも評価される経験を積めるかという視点を持つことが大切です。
監査法人から監査法人へ転職する場合
年収・担当業界・昇進環境を比較する
同じ監査法人への転職でも意味はあります。担当業界を変えたい、IPO監査を経験したい、大手から中小へ移りたい、マネージャーを目指したいといった場合です。
ただし、仕事内容が大きく変わらない可能性もあります。「なぜ今の監査法人ではなく、別の監査法人なのか」を説明できるようにしておきましょう。
公認会計士からFASへ転職する場合
M&Aや財務デューデリジェンスに関われる
FASは、公認会計士の転職先として代表的な選択肢のひとつです。業務には、財務デューデリジェンス、バリュエーション、M&A支援、事業再生などがあります。
監査経験で身につけた財務諸表の分析力を生かしやすい一方、案件によって忙しさが大きく変わることもあります。「M&Aに興味がある」という理由だけでなく、配属部門が担当する業務、案件規模、自分の役割まで確認しましょう。
日本公認会計士協会の公認会計士の仕事内容でも、監査、会計、税務に加え、組織再編や財務デューデリジェンスなどのコンサルティング業務が紹介されています。
公認会計士が事業会社へ転職する場合
経理・財務・経営企画などが候補
事業会社では、経理、財務、経営企画、内部監査、IPO準備などで会計士経験を生かせます。
監査法人では外部から企業を見る立場ですが、事業会社では自社の数字を作る側になります。そのため、企業経営により近い仕事をしたい人には向いている可能性があります。
一方で、仕訳入力、決算実務、予算管理、社内調整など、求人ごとに期待される役割は異なります。会計士資格だけでなく、入社後に担当する実務を確認してください。
IPO準備企業への転職はどう?
上場準備を経験できる可能性がある
IPO準備企業では、決算体制の構築、内部統制、開示体制、監査法人対応、証券会社対応などを担当する場合があります。会計士の監査経験を生かしやすい分野です。
一方で、上場準備企業は制度や業務フローが未完成な場合もあります。「決められた仕事をこなしたい人」より、ゼロから仕組みを作ることに抵抗がない人のほうが向いているでしょう。
上場予定時期だけで判断せず、資金調達状況、管理部門の人数、経営陣の方針、自分に与えられる権限も確認することが大切です。
公認会計士が転職で失敗しやすい3つのケース
年収だけで決める
年収が100万円上がっても、残業、休日対応、出張が増えるなら、本当に転職成功といえるかは分かりません。条件を時間単価や生活への影響まで含めて比較しましょう。
職種名だけで判断する
「経営企画」「FAS」と書かれていても、会社によって実際の仕事は異なります。求人票だけでなく面接で具体的な業務内容を確認しましょう。
会計士資格があれば何でもできると思う
公認会計士資格は専門資格ですが、転職先によって求められる能力は異なります。FASならM&A、事業会社なら経理実務やマネジメントなど、追加の経験が評価されることがあります。
資格だけではなく、これまでの実務経験をどう生かせるかを考えましょう。求人選びで見落としやすい点は、20代の転職でやりがちな失敗5つと回避法でも確認できます。
公認会計士の転職エージェントは使ったほうがよい?
会計・財務分野に強いサービスを比較する
公認会計士の場合、一般的な転職サイトだけでは求人の違いが分かりにくいことがあります。監査法人、FAS、会計コンサル、経理・財務、IPO、経営企画などを比較する場合は、会計・士業分野に詳しい転職エージェントを利用する方法もあります。
転職エージェントでは、自分の市場価値、年収相場、キャリアの選択肢、求人情報、面接対策などを相談できる場合があります。ただし、紹介された求人をそのまま選ぶ必要はありません。
複数の求人・転職サービスを比較して判断することが重要です。サービス選びの基本は、20代の転職エージェント選びでも解説しています。
公認会計士が転職前に整理したいチェックリスト
公認会計士の転職を始める前に、次の項目を書き出してみましょう。
- 現在の年収
- 希望年収
- 監査経験年数
- 担当業界
- マネジメント経験
- 希望する仕事内容
- 希望勤務地
- 許容できる残業時間
- リモート勤務の希望
- 5年後にやりたい仕事
これだけでも求人を絞りやすくなります。希望条件を「必須」「できれば」「こだわらない」の3段階に分けると、求人を比較しやすくなります。
面接で転職理由を説明するときは、転職面接で退職理由を伝えるポイントも参考になります。
公認会計士の転職についてよくある質問
まとめ|公認会計士の転職は「次に何を経験したいか」で選ぶ
公認会計士の転職では、監査法人以外にもさまざまな転職先があります。確認したいのは次の5項目です。
- 転職目的
- これまでの監査経験
- 年収・給与条件
- 繁忙期と残業
- 将来のキャリア
特に重要なのは、現在の職場から離れることだけを目的にしないことです。「次の会社でどんな経験を積みたいのか」を考えると、転職先を選びやすくなります。
会計士向け求人は一般的な求人と専門求人で内容が異なることもあるため、複数の転職サービスを比較して判断しましょう。

